過去、現在、未来へ叫ぶポンペイの火砕流

 今日の地球画像は、カリブ海の火山、セントへレンズ、そして、イタリアの火山です。
 古代都市のポンペイ火砕流による埋没は、2000年前の出来事ですが、まるで現在起こったかのように鮮明な被災状況を伝えています。
 古代都市ポンペイがあったのは、現在のナポリ付近ベスビオ山が迫る一帯です。
 西暦79年、このベスビオ山が噴火し火砕流ポンペイを襲いました。
 厚く積もった灰が、遺跡や亡くなった人々を保存しました。

 今日の地球画像で取り上げたこの火砕流が襲ったカリブ海の小さな国モントセラトでは、幸いにも未来の歴史で化石になるのを免れることができました。
 モントセラトにある町のプリスマ崩壊の2年前から専門家が、火山の不穏な状態を指摘し、当局が島の南部から住民を避難させていたのです。
 犠牲者は、立ち入り禁止区域にいた19人のみでした。
 ただし、火山活動は今も活発で、島の大半に入れないままです。
 モントセラトにある火山のスーフリエールヒルズには、他にも脅威が存在します。
 火山灰が上昇しないのです。爆発直後に崩れ落ち、火砕流として山を駆け下ります。

 アメリカのワシントン州には、別の凶器を持つ火山があります。
 セントへレンズ山は、不安定な灰と溶岩から成り、巨大な地滑りと連鎖反応の危険があるのです。
 1980年、北壁にマグマの隆起ができ、急激に膨らみ始めました。
 やがて火山性地震で、地滑りが起こり隆起が崩壊しました。
 シャンペンの栓を開けた状態となり、噴火と地滑りが同時に発生し、しかも、爆風による雲は周囲28キロに広がりました。
 立ち入り禁止区域は、狭すぎました。
 死者の数は75名、爆風で数百万本の樹木が倒れ、灰色の荒野となりました。
 このときのセントへレンズの噴火が大惨事になった原因の一つは、縦方向に爆発したことです。
 噴火は、山の中身を周囲に撒き散らしたようで、巨大なU字型の火口が出現しました。

 天候への影響なら、1991年に起きたピナツボ山の噴火が最悪でしょう。
 これは、20世紀最大の噴火の一つで、大量の火山灰が4万2千戸の家を壊しました。
 屋根の灰が雨を吸い重くなったのが主な原因です。
 一方、2000万トンの亜硫酸ガスも大気圏に撒き散らされました。

 ガスは、硫酸質の雲を形成し、赤道を越えて広がり、日照にも影響を与えました。
 以降、地球の気温は、2年以上も低いままでした。
 噴煙がジェットエンジンに詰まり惨事を招く危険性もあります。
 過去25年間に2機のジャンボ機がエンジン停止に陥りました。
 再始動が一瞬遅れれば、大惨事になったことでしょう。
 この時のピナツボ山の噴火では、空港で旅客機が腰を抜かして尻餅をつきました。(証拠画像は、今日の地球画像ページ)

 先史時代の巨大な噴火では、恐竜など多くの生物が絶滅したらしいのです。
 6500万年前、恐竜たちは絶滅の一歩を踏み出しました。
 巨大な小惑星の衝突が取りざたされていますが、大噴火が地球規模の災害を誘引したという説もあります。
 噴火により太陽光が遮断されたため、地表の温度が劇的に低下、水は汚染され植物は生育不良、そのため、恐竜の食料が減ったり卵が汚染されたのかもしれません。
 火山灰の降下に対応できず、絶滅へ向かった可能性もあります。
 将来、地球のどこかで、地中の猛烈な力が、巨大噴火を生むかもしれません。
 記録では、10万年に1回ほど大噴火が起きています。

 ナポリの海岸線は、3万9千年前の大噴火で全て造られました。
 噴火は巨大な火砕流を発生させ、厚い灰で何もかも覆いつくしました。
 同じことが再び起これば、人類の生存能力が試されます。
 過去も現在も、そして未来も、破壊こそが火山の本質なのです。

 過去、現在、未来も容赦なく襲う火砕流と火山の 今日の地球画像 2005年11月3日号 詳細ページ